2013年1月に書かれた飛行機内のカジノに関する英文記事を見つけました。ギャンブルも旅行も大好きな人にとっては、カジノのある飛行機があるなら搭乗してみたい!と思うはず。ワタクシもその一人なので、調査を開始しました。
どうやら、フランスの航空設計スタジオ、エアジェットデザイン/AirJet Designsとデザイネンシス/Designensesが協力し、機内の豪華なバー兼カジノ、カジノジェットラウンジ/Casino Jet Lounge なるものを2012年10月に作成、発表した様子。
カジノジェットラウンジの写真には、モダンでおしゃれなチェア、バー、ブラックジャックテーブルが映っています。
航空設計スタジオ創設者の二人は、「いつか長距離商用便の標準になることを願っています」とコメント。確かに!これは良い話ではありませんかっ!!!
しかしこれは高そう・・・一体おいくら万円?どこの路線を行き来してる?というわけで、調査を続けていくと・・・
しかしカジノ付き旅客機の運航はどこを探しても見当たりません。10年前にニュースになっていたカジノジェットラウンジのフライトはどうなったのでしょうか?
この【機内でギャンブル】というコンセプトは、新しいアイデアかと思いきや、実は何十年も前から存在していたコンセプトです。
そして実際に、【機内でギャンブル】を提供した航空会社が過去にありました。
シンガポール航空は1981年、シンガポールとサンフランシスコ間を運航する便の通路に数台の軽量スロットマシンを設置し、【機内でギャンブル】を実現しました。
航空会社は積載重量が重要でもあるため、多くの重機を搭載して飛行すべきではありません。よって軽量のスロットマシンを設置しましたが、最初の飛行からわずか数時間で破損してしまい、より重い機器を設置しなければなりませんでした。
しかしたった2か月後、シンガポール航空はこれらの機械が「運用上の問題」を引き起こしたとして撤去しました。
1990年代、スイス航空はギャンブル ソフトウェアを導入し、フライトエンターテイメント画面でオンラインギャンブルを提供し始めました。
現在でも様々なエアラインのフライトエンターテイメントのゲームにカジノゲームが入っていることがありますが、現金を賭けることはできません。しかしこの時のスイス航空では、ポーカーやブラックジャックなどのカジノゲームに、乗客は最大350ドルを賭けることができたのです。
このアイデアは、他の航空会社も追随するだろうと思われました。 1998年にスイス航空旅客機が墜落するまでは・・・
航空事故調査官らは、この事故の原因として同機の機内エンターテイメントシステムの故障・過熱が関係していると示唆しました。よってスイス航空は、直ちに機内でのオンラインギャンブルを中止しました。
ヨーロッパで有名なアイルランドの格安航空会社、ライアンエアは、2004年に機内エンターテイメントシステムを通じて機内ギャンブルを導入すると発表しました。
格安エアラインには通常、機内エンターテインメントはありません。機内エンターテインメントの導入には、提供されているコンテンツのライセンス費用に加え、セットアップ費用もかかります。
そこで、ライアンエアは当時流行っていたポータブルメディアプレーヤーを使った機内エンターテインメントサービスを11月に開始。保有していた82機のうち5機でのテストサービスでしたが、この時まだギャンブルはできませんでした。
しかしわずか3か月後、既にこのシステムは失敗だと思われました。エンターテイメントサービス料金を支払った乗客は、1便当たり5人未満だったからです。結果、2005年4月、【機内でギャンブル】どころか、機内エンターテイメントサービスも開始から半年も経たないうちに中止されました。
ライアンエアの失敗を知ってか知らずか、ヴァージンアトランティック航空の創設者、リチャード・ブランソンは2005年、「最近購入した数機のA380型機にはダブルベッド付きの個室と機内カジノが搭載される」と発表しました。
「ヴァージン機に乗って幸運を掴む方法は2つある」とニューヨーク・タイムズ紙に語るほどでしたが、それ以来、何の進展もなし。
それから数年後、ヴァージンの広報担当者はCNNのインタビューに対し、「カジノコンセプトは、数年前に話し合った他の様々なアイデアと同様、単なるアイデアにすぎず、実を言うとそれ以上の進展はありませんでした。」と語りました。
最終的にA380にカジノを導入しなかった理由についてはコメントしていません。
長距離フライトでできることといえば、飲み食いするか映画を見るか寝ることだけ。
もっと楽しい体験を、と機内でギャンブルシステムを導入すると、乗客間のいざこざや、犯罪行為につながると考える人もいて、乗客はもちろん、パイロットや乗務員にとっても危険な環境が生まれると指摘しています。
カジノジェットラウンジを発表した航空設計スタジオ創設者たちは、「席を立って別の空間に入ると、まったく異なる体験が得られます。カジノジェットラウンジは、単なるバーやエンターテイメントのアイデアではありません。 私たちはそれを社交的な空間として捉えています。」と語っており、オンラインでのギャンブルは【機内でギャンブル】コンセプトの競合とは考えていないようです。
では、なぜカジノジェットラウンジの発表から10年もたった今、このコンセプトを導入しているエアラインはないのでしょうか?
航空会社が限られた旅客スペースとそれに伴う運賃を、「社交の場」に使うことは考えにくいのではないでしょうか。
燃料費は常に上昇しており、大多数の航空会社はA380にカジノを導入するよりも、可能な限り多くの座席を詰め込もうとするはずです。船上カジノの導入コストは非常に高額と言われていますが、機内カジノの導入コストも例外ではないでしょう。
また、最近の旅行者は格安航空券を好む傾向にありますが、カジノでスペースを使えば、その分、残りの座席の料金に上乗せしなければなりません。
さらに、航空会社がホテル予約サイトやレンタカーサイトと提携しているのと同じように、オンラインギャンブルにしろ実際にカジノテーブルを設置するにしろ、カジノと航空会社が提携しなければならない可能性もあります。
これらの投資に見合ったリターンが望めなければ、 【機内でギャンブル】の実現は難しいように思われます。
収益の問題もさることながら、【機内でギャンブル】の最大の障害は法的問題です。
ギャンブルに関する法律は、世界中どこも同じではありません。サウジアラビアやUAEなど、ギャンブルが違法とされている国の上空では違法をなるでしょうし、ラスベガスというカジノシティのあるアメリカでも、1994年以来、米国空域でのギャンブルは禁止されています。
オンラインギャンブルやランドカジノが合法な国の上空でも、ライセンスの問題が浮上するのではないでしょうか。
フライトの出発地と目的地、機体の登録国、航空機が上空を飛行する国など、航空法と国際法が複雑に入り交じり、航空会社はこれらの法律に違反するリスクを冒して【機内でギャンブル】を実現することは考えにくいのではないでしょうか。
20年前は機内WIFIなどの設備がなかったため、飛行中にWIFIやインターネット接続を使ってオンラインギャンブルサイトにアクセスすることはできませんでした。そもそも、スマホもそこまで発達していませんでしたしね。
しかし現在は状況も変わり、機内でも5G回線や追加料金を払って(ビジネスクラス以上は無料ですが)WIFIに接続すれば、オンラインカジノやブックメーカーにアクセスできるのでは?と思えます。
スマホでカジノゲームをプレイするには安定したインターネット接続が必要ですが、残念ながら機内での5Gは使えないことが多く、WIFIも国際線となると繋がらなかったりローディングが遅かったり、時々接続が切断したりします。
そしてそれ以前に、アクセスしようとするサイトがどれだけ「違法な国からのアクセス対策をしているか」にもよります。
登録した国から出ると、例えオンラインギャンブルが合法な国にいてもアクセスをブロックしているサイトもあれば、ギャンブルサイトが許可を得ていない国からのアクセスをブロックしているケース、はたまた対策が十分でなくアクセス可能なサイトもあるでしょう。
これらの理由から、たとえアクセスできたとしてもストレスなくプレイすることは難しいでしょう。
2014年のフォーブス誌の調査によると、回答者の57%が、飛行機内でカジノが提供されればもっと頻繁に飛行機に乗ると回答したそうです。
もちろんワタクシも、カジノがあるのとない飛行機があれば、ある方を選ぶでしょう。払っても良いと思える値段か、という問題もありますが。
【機内でカジノ】のコンセプトはこれまで何度も試され、失敗に終わっていますが、完全に諦められたコンセプトではありません。
せめて法的問題だけでも解決されれば、空飛ぶカジノは実現しそうに思えます。実際、クルーズ船では法に則ってカジノが運営されていますしね。
カジノジェットラウンジのカジノテーブルに座り、快適で大興奮の空の旅が近い将来実現されることを願いましょう!
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